中国行きのスロウ・ボート
ファイルの中におよそ20年以上も昔のメモがあった。勤めていた高校の文芸誌(?)かなんかに寄稿したメモだ。なんだかこれがそのまま(イラストもふくめて)載ったような気がする。これを悪漢はスキャナにかける。ww。拡大するとよーく見えます。なんで「1973年のムラカミ」なんだろう?「ピンボール」かな?
悪漢はさらに「読んde!!ココ」して以下にテキスト化します。
村上春樹(むらかみはるき)に『中国行きのスロウ・ボート』っていう短編集がある。その中に「土の中の彼女の犬」とかなんとかいうのがある。(いま手元にないんで、少し違うかもしれない)
こんな話。
シーズン・オフのリゾートホテルで《僕》は女の子に出会う。女の子といろんな話をする。で、気付くんだが、女の子はなんだかとても自分の「手」のことを気にしている。わけを話したがらないんだが、《僕》に打ち明ける。それはこうだ。
少女時代に可愛がっていた犬が死んで、とほうにくれる。あきらめて庭に埋葬する。いろんな思い出の品々といっしょに自分の預金通帳も埋める。
何年か経って、友達がお金に困って、その預金通帳を掘り出すんだ。そのとき、自分の手に、あの犬の匂いがしみついてしまうんだ。それからというもの、彼女は、自分の手の匂いが気になって、しょっちゅう手を洗わなければ生きていけなくなってしまった。知的で、申し分なく素敵な子でも思いがけなくこんなことになってしまうものなんだ。で、やがて、《僕》が休暇を終えて明朝ホテルを立とうとする夜、《僕》は、彼女の手の匂いを嗅がさせてもらえないか、つて言うんだ。 いいわよ、って彼女は手を差し出す。
「どう?」
「石鹸の匂いがするだけです」
僕(新地)は、辛くなったときに、この掌編(しょうへん)を読んでは慰めてもらったりするんだ。僕たちは、ホントささやかなことを、とても重荷に感じながら生きていたりするものなんだ。自分では、楽になりなよ、つて自分に言いきかせてるつもりでいても。たぶん、誰かに、「ちっとも変じゃないよ」って言ってもらいたいんだ。たった一人でいい。自分の生き方の全部を肯定してくれる他人が欲しいんだ。そして、ホッとしたいんだ。そうじゃないだろうか?
だからさ、そんな他人にきっと巡り合ってください。自分がそうなれるともっといいねえ。
わがままに生きていいのさ千年の夢につらなれ夢をつらぬけ